ニール・アードレイ Neil Ardley - Greek Variations (1970)
ニール・アードレイ、イアン・カー、ドン・レンデル|グリーク・ヴァリエーションズ
- Genre:ジャズ
- Style:ビッグ・バンド、モード・ジャズ、ジャズ・ロック
- Recording:1970
- Release:1970
- Label:Columbia
- Barbara Thompson, Jeff Clyne, Neville Whitehead, Amaryllis Fleming, Charles Tunnel, John Marshall, Trevor Tomkins, Jack Bruce, John Mackswith, Chris Spedding, Karl Jenkins, Don Rendell, Stan Robinson, Brian Smith, Michael Gibbs, Ian Carr, Frank Ricotti, Ken Essex, Jack Rothstein, Kelly Isaacs
ピアニストとサキソフォニストから編曲家・音楽監督への道へ進むニール・アードレイの初リーダー作。この直前にはニュー・ジャズ・オーケストラ The New Jazz Orchestra の音楽監督を務め、かの有名な名盤「Le Déjeuner Sur L'herbe」をリリースしたばかり。
このアルバムは、双頭ならぬトリプル・ヘッダーで、ニール・アードレイがリーダーのA面、イアン・カー、ドン・レンデルのそれぞれのバンド・パートから構成されています。イアン・カーはドン・レンデルと袂を分かってニュークレウス Nucleus を結成したばかり(1969年)。「Shades of Blue」の三者がそれぞれリーダーとなって一枚のアルバムを作っているわけです。
A面を占める複雑でエキゾティズムを含んだ大曲を監督するアードレイ、ニュークレウスの夜明けを感じさせるカー・バンド、そのカーの抜けたレンデル・バンドはストレートなブリティッシュ・ジャズを追求する、という三者三様の表現ですが、とはいっても、主役はニール・アードレイ。そして、このアルバムを含めて、続く「A Symphony of Amaranths」「Kaleidoscope of Rainbows」と三部作を成すと言われています。
それではB面から聴いていきましょう。
B面の冒頭3曲はイアン・カー=ニュークレウス。「Wine Dark Lullaby」「Orpheus」では落ち着いた英国ジャズを聴かせてくれますが、「Persephone's Jive」でエレキ・ギターも参戦して突然のジャズ・ロック。これが前の2曲でちょっと間が抜けてしまったところもあって(コケたともいえるでしょう)、そのギャップがある分余計に格好良い。
B面後半はドン・レンデル・カルテット(イアン・カーが抜けたためクインテットからカルテットへ)。実際演奏は、ドン・レンデル=イアン・カー・クインテットの延長線上にあり、先行するイアン・カーが「Persephone's Jive」でうまく襷をつないだかたちとなったので、B面全体の構成は驚くほどよく、統一感があります。ドン・レンデルの白眉は「Odysseus, King of Ithaca」で、英国伝統勢の面目躍如とでもいうべきピアノレス・モードの傑作となっています。
さて、A面はニール・アードレイの監督した23分を超える「Greek Variations」。室内楽ジャズ・オーケストラ作品とでも呼べそうな一大絵巻でこのアルバムのハイライトといって間違いありません。
金管楽器が醸し出すどこか中近東を思わせる端正なテーマに導かれ、次第にオーケストレーションが加わっていきます。ベースのリズム変化に導かれ、クラシカルなストリングスが場面の変化を伝えると、そこからモード・ジャズに突入。この変調は繰り返され映画のように場面展開しながら(正に変奏曲)、次第にオーケストレーションとジャズが分かちがたく結ばれつつ、ジャズという即興音楽の枠を取り払った組曲として成立するのです。