カエターノ・ヴェローゾの20年作 Caetano Veloso & Ivan Sacerdote (2020)

カエターノ・ヴェローゾ & イヴァン・サセルドーチ / s/t
- Genre:ラテン, ブラジル
- Style:MPB
- Recording:2020
- Release:2020
- Label:Universal Music
- Caetano Veloso (vo, g), Ivan Sacerdote (cl)
巨匠カエターノの目下最新作は、若手クラリネット奏者のイヴァン・サセルドーチとのデュオ・アルバム。年間ベスト級のこのアルバムがフィジカルで流通していないことに時代の変遷を感じざるを得ない、というかびっくりする。お気に入りのアルバムはレコードで手元においておきたい根性というのは、ワールド・ミュージックのファンにこそ多いのではないでしょうか。
一年ほど前に他界したボサ・ノヴァの巨匠ジョアン・ジルベルト。彼が晩年に残した「声とギター」は、その見事な邦題が映し出すように、極限までジョアンの本質に迫った、いわばそのアルバムでジョアンは枯淡の境地に達したのでした。それはジョアン自身の境地でありながら、カエターノのプロデュースによるところが多大だったことは間違いなく、そういう意味で、カエターノ自身もその延長に自らの歌の本質を見つけることになる予定だったのではないか、と思ってしまうのです。
全編カエターノの曲で構成されたこの美しいアルバムでは、往年の名曲「Trilhos Urbanos」や「Manhatã」を含めて、今や枯淡の境地に達した歌が聴く人を優しく包み込み、そこにイヴァン・サセルドーチのクラリネットがそこはかとなく新しい世代の息吹を添える、20年代の始まりに相応しい作品となっています。1986年のアルバム「カエターノ・ヴェローゾ」が放つ普遍的な輝きは、現代も色褪せることなく、むしろアップデートされてここに提示されています。是非ご堪能ください。

カエターノ・ヴェローゾ / s/t (1986)
- Genre:ラテン、ブラジル
- Style:MPB
- Release:1986
- Label:Philips
- Caetano Veloso (vo, g)
カエターノが1986年に発表したギター一本弾き語りの名作。
