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51分一本勝負 サン・ラー Sun Ra - I Roam The Cosmos (2015)

Sun Ra - I Roam The Cosmos (2015)

サン・ラー・アンド・ヒズ・ソーラー・アーケストラ|アイ・ローム・ザ・コスモス

Genre:ジャズ
Style:スペース・ジャズ
Recording:1972
Release:2015
Label:Art Yard
Sun Ra, June Tyson, Marshall Allen, Danny Davis, John Gilmore, Akh Tal Ebah, Kwame Hadi, Eloe Omoe, Danny Ray Thompson, James Jacson, Ronnie Boykins, Tommy Hunter, Harry Richards, Robert Underwood, Lex Humphries, Atakatune, Alzo Wright, Odun

Sun Raのライブ盤「I Roam The Cosmos」は、1972年にニューヨークのジャズ・クラブSlug's Saloonで演奏された録音で、2010年代中盤に突如として正規リリースされました。このアルバムは、長年にわたり未発表のままだったため、リリース当時に大きな話題となりました。特に、名高いDJで音楽プロデューサーのジャイルズ・ピーターソンもこのアルバムをフェイヴァリットの一つとして挙げたことで、さらに注目を集めました。正規リリースに際しては、音質の向上やリマスタリングが施され、現代のリスナーにも聴きやすい音質となっています。これにより、当時のライブの臨場感がより鮮明に再現されています。

「I Roam The Cosmos」は1972年に録音されて以来、長い間正式なリリースがなされていませんでした。しかし、2010年代中盤に正規リリースされると、Sun Raの再評価の波もあり、彼の音楽遺産の重要な一部として広く認識されるようになりました。

「I Roam The Cosmos」は、Sun Raの他の作品と比べて、たゆたうようなゆったりとした演奏が特徴です。このライブでは、彼の独自の「コスモス節」が存分に発揮されていますが、アヴァンギャルドな要素は控えめで、比較的多くのジャズファン層にアピールできる内容となっています。

Sun Raの特徴である宇宙的なテーマは、このライブでも健在です。彼の音楽哲学やビジョンが音楽を通じて聴き手に伝わります。宇宙的なサウンドスケープと哲学が融合し、独特の音楽体験を提供します。

即興演奏や複雑なリズムが抑えられ、柔らかく心地よいアプローチが中心となっています。これにより、アヴァンギャルドなジャズに馴染みのないリスナーでも楽しめる作品となっています。

例えば「Space Is The Place」はSun Raの代表作の一つであり、壮大なアヴァンギャルド・ジャズの要素が強いのに対し、「I Roam The Cosmos」はそのテーマに寄り添いながら、よりリラックスした音楽性を持っています。言わば「Space Is The Place」をチルアウトしたバージョンと表現できます。

このトラック(アルバム)は、極端に遅いテンポの「A Love Supreme」と捉えることも可能です。John Coltraneの「A Love Supreme」が持つスピリチュアルな要素が、Sun Raの宇宙的なビジョンと共鳴しているともいえるでしょう。演奏の中でコールアンドレスポンスが繰り返され、次第に宇宙との対話が増幅されていく様子は、深い霊的な体験を呼び起こします。

名高いDJで音楽プロデューサーのジャイルズ・ピーターソンも、「I Roam The Cosmos」をお気に入りの一つとして挙げています。ピーターソンはジャズ、ソウル、ファンクなど幅広いジャンルの音楽を紹介することで知られ、その推薦は多くの音楽ファンにとって重要な指標となります。彼がこのアルバムをフェイヴァリットに挙げたことにより、Sun Raの音楽が再評価され、特に新しい世代のリスナーに対してその魅力が広く伝わりました。 長らく埋もれていた音源が正規リリースされたことで、Sun Raの音楽遺産がさらに豊かになりました。新たな音楽ファン層にアプローチするきっかけとなり、彼の音楽が再評価されました。

「I Roam The Cosmos」は、51分に及ぶ一曲のみの構成となっています。この長尺のトラックの中で、ボーカルのコールアンドレスポンスが繰り返され、次第に宇宙との対話が増幅されていくようなイメージが喚起されます。Sun Raの演奏とアーケストラのインタープレイは、聴き手を宇宙的な旅へと誘い、深遠な音楽体験を提供します。このような構成により、アルバムは一貫したテーマとムードを持ち、独特の魅力を放っています。

また、このアルバムはSun Ra的なゴスペルとして捉えることもできます。彼の音楽には、ブラックミュージックとしてのスピリチュアリティが色濃く反映されており、その点でJohn Coltraneの「A Love Supreme」とも通じる部分があります。Sun Raの演奏が持つ精神性と宇宙的な視点が融合し、深い霊的な体験を提供します。

「I Roam The Cosmos」は、Sun Raの音楽の中でも特にリラックスした雰囲気を楽しめるライブ盤として、多くのジャズファンに親しまれる作品です。彼の入門盤としての性格も帯びていると言えるでしょう。おすすめです。

公式サイトに掲載されているライナーには以下のように書いてあります。

Sun Raの膨大なディスコグラフィーには、このタイトルへの言及は2つしかない。1つは1973年のカーネギーホールでの公演を収録したVoice of Americaのモノラルテープ、もう1つは1974年のハンターカレッジでの公演を収録したオーディエンステープである。この録音は明らかにサウンドボード録音ではなく、極端なステレオである。この宇宙ドラマは、June Tysonが「Astro Black」の歌詞を哀歌のような「Discipline 27-II」のグルーヴに乗せて朗読することから始まる。その後、Sun RaとJune Tysonのコールアンドレスポンスの朗読へと移り、Arkestraが1時間近くもだらだらとした「D27-II」のリズムを維持し、ホルンのコーラスがアクセントを添える。一人称で人格を切り替えるかのように、ラは宇宙哲学を唱え、啓蒙を呼び起こし、神話を語り、悲惨な予言を伝え、ジューン・タイソンがそれぞれの祈りをエコーし、ドラマチックに表現する。テープボックスのマーキングによると、このパフォーマンスは1972年7月、ローワーイーストサイドのジャズのメッカ、イースト3番街にあるスラッグス・サルーンで行われたもので、1960年代後半から70年代前半にかけて、ラとアーケストラは頻繁にオールナイトのセットを演奏していた。メンバーは、誰が現れるか、誰が楽器を演奏できるか(または上手にフェイク演奏できるか)、そしてバンドリーダーの予言によって変動した。これらの伝説的な夜は、荒々しく予測不可能で、しばしば悲惨で、芸術的な論争もなかったわけではない。これらの夜によって、サン・ラはニューヨークのジャズの常連客の注目を集め、大胆なショーマンシップに対する彼の評判が高まった。

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