ジャズの名盤・名作をご紹介

ジャズの名盤探検隊

ロイド・マクニール Lloyd McNeill - Washington Suite (1970)

Lloyd McNeill - Washington Suite (1970)

ロイド・マクニール - ワシントン・スイート

Genre:ジャズ
Style:ブラック・ジャズ
Recording:1970
Release:1970
Label:ASHA Recording
Marshall Hawkins (b), Keneth Pasmanick (bassoon), William Huntington (cl), Eric Gravatt (ds), Eugene Rush (ep), Lloyd McNeill (fl), Orrin Olson (fh), Andrew White (oboe)

ワシントンD.C.を拠点に活動したロイド・マクニール。エリック・ドルフィー Eric Dolphy やムラトゥ・アスタトゥケ Mulatu Astatke との共演経験があり、フルート奏者としての顔のほかに画家や詩人としての顔を持つマルチ芸術家。本作は自身のレーベルからリリースした3枚目のアルバムで、地元ワシントンのバレエ・カンパニーのために書き下ろした作品。ブラック・ジャズからレア・グルーヴ方面まで幅広く支持される人気盤で、収録された6曲全てが名曲というモンスター・アルバム。

エリック・グラヴァットのドラムとマーシャル・ホーキンズのベース、ユージン・ラッシュのエレピの上をロイド・マクニールのフルートが揺蕩うチェンバーな編成で、イージー・リスニングやサウンドトラックをスピリチュアルに再構築したようなサウンドスケープに仕立ています。美しくアブストラクト、理知的でダウナーなサウンドはブリティッシュ・ジャズに通じるところもあるのでは。

トラック 1「Home Rule」はクラブ・サイドからも絶大な支持を得ているであろうダウナー・ジャズ・ファンクの名曲中の名曲。8ビートに乗っかるうねるベースが強力な原動力となり、モーダルなエレピが全体のサウンドを引き締める。ロイド・マクニールのテーマともソロともつかないフレーズが実にミステリアスでドラマティック。圧巻は16分33秒に及ぶトラック 5「City Tryptych」。パートごとの構成と即興が非常に見事で、かつ、特筆したいのは90年代後半にシカゴ音響派が提示したような音像がここにすでにあるということで、それはドラムの妙によるところが大きい。ドラムスのエリック・グラヴァットはバイヤード・ランカスター Byard Lancaster やバイロン・モリス Byron Morris 関連の人物。

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ジャズやブラジル音楽が好きです。ふーん、これはジャズなのか、という名盤から、うん、これはジャズじゃないね、という名盤まで。ご意見・ご感想などがあればTwitterまで。@elenco

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン Hannibal Marvin Peterson - Hannibal In Berlin (1977)

Hannibal Marvin Peterson - Hannibal In Berlin (1977)

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン - ハンニバル・イン・ベルリン

Genre:ジャズ
Style:スピリチュアル・ジャズ、ブラック・ジャズ、モーダル
Recording:1976
Release:1977
Label:MPS
Steve Neil (b), Diedre Murray (cello), Allen Nelson (ds), Michael Cochrane (p), George Adams (ts), Hannibal Marvin Peterson (tp)

ハンニバル・マーヴィン・ピータソンのアルバム、3回目のご紹介。自主リリースしたリーダー・デビュー盤後、独MPSからリリースすることになった2枚目のリーダー作。その後もアメリカでの吹き込みは難しかったようで、今度は1976年のベルリン・ジャズ・フェスティヴァルでのライブ録音。MPSリリース。

冒頭「The 23rd Psalm」。詩篇という単語が唐突に出てくるところがスピリチュアルですが、ハンニバルがクリスチャンかどうかは知るところではありません。ハンニバルがハイ・トーンで吹きまくる様が圧巻で、トランペットで再現されたシーツ・オブ・サウンドのような、コルトレーンが舞い降りたような怒涛のドライブ感。コルトレーンの死から約10年、彼のスピリッツとシーツ・オブ・サウンドはハンニバルというカルタゴの将軍の名を冠した一人のトランペッターに、象のいななきサウンドとしてしっかりと引き継がれていたのでした。しかもヨーロッパの聴衆を巻き込んで。

途中、コルトレーンのカバー「Bessie's Blues」を挟みつつ、ラスト「My Favourite Things」へ。正確にはコルトレーンの「My Favourite Things」へ。このアルバム一番の聴きどころ、と言いたいところですが、個人的には「The 23rd Psalm」で勝負あり。ハード・パッピンな「Bessie's Blues」、モーダルなトラック 4「Swing Low Sweet Chariot」も聴きどころです。

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名曲「Soul Brother」収録 ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン Hannibal Marvin Peterson - Hannibal (1975)

Hannibal Marvin Peterson - Hannibal (1975)

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン - ハンニバル

Genre:ジャズ
Style:スピリチュアル・ジャズ、ブラック・ジャズ
Recording:1975
Release:1975
Label:BASF/MPS
Stafford James (bs), Chris Hart (per), Diedre Murray (cello), Thabo Michael Carvin (vo, per), Michael Cochrane (p), Hannibal Marvin Peterson (tp, vo)

ハンニバル・マーヴィン・ピータソンのアルバム、2回目のご紹介。通称象さん。自主リリースしたリーダー・デビュー盤の後、やはりアメリカ国内での吹き込みは難しかったようで、独MPSからリリースすることになった2枚目のリーダー作。総じてファーストを積極的に推し進めたグレイトな好盤。

中規模のビッグ・バンドのブラック・ジャズだとフリーの要素が強かったりするものですが、あくまでもソフィスティケートされたスピリチュアルに留まっているのが見事で、形式的にはテーマに続くソロがあって、それがバトンされていくところなども案外伝統的だったりもします。もしかするとトランペットという楽器の特性上ゆえの音楽性ということもあるかもしれません。

冒頭「The Rabbit」はアルバム全体の方向を決定づける序曲で、ハンニバルの高らかなトランペットとディーダー・マレイのチェロが印象的。そのまま雪崩込むトラック 2「Revelation」は洗練されたスピリチュアルの極みとでもいえるストレート・アヘッドなナンバー。トラック 3 は緩で「Misty」。トラック 4「The Voyage」は後期コルトレーンの影響であろう呪術的・土着的な儀式性が濃く、それにしては耳触りが良い。ラストを締めくくるのは、マルコムXに捧げられた「Soul Brother」で、このアルバムのハイライトにしてハンニバル史に燦然と輝くスピリチュアル・ファンク一大絵巻。14分に及ぼうかとする大曲を一気に聴かせる張り詰めたテンション、それに自らの音楽への揺るぎない信念がなせるハイトーンのトランペット・ソロは正にジャケットが象徴する象のいななき。

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ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン Hannibal Marvin Peterson - Children of The Fire (1974)

Hannibal Marvin Peterson - Children of The Fire (1974)

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン|チルドレン・オブ・ザ・ファイアー

Genre:ジャズ
Style:スピリチュアル・ジャズ、フリー・ジャズ、ポスト・コルトレーン
Recording:1974
Release:1974
Label:Sunrise Records
Richard Davis (b), Diedre Murray (cello), David Amram (cd), Lawrence Killian (per), Billy Hart (ds), Barbara Burton (per), Marvin Tuten (per), Michael Cochran (p), Art Webb (pf), Marvin Tuten (sit), Barbara Burton (ds), Hannibal (tp), Judith Graves (viola), Julius Miller (viola), Myung Hi Kim (vl), Rynae Rocha (vl), Stanley Hunte (vl), John Blake (vl), Alpha Johnson (vo)

ハンニバル・マーヴィン・ピータソン。ギル・エヴァンス Gil Evans やファラオ・サンダース Pharoah Sanders のバンドでトランペッターとして活躍しながらも、自らのリーダー作をリリースしてくれるレーベルが見つからず、自主盤としてリリースせざるを得なくなったアルバムがこれ。時は1974年、時代は既にフュージョン全盛に足を突っ込んでいるにも関わらず、コルトレーンの後継者を名乗るブラック・ジャズはたぶん行き場を失いつつあったのでしょう。

時はベトナム戦争敗戦を受け、事後処理に追われているアメリカ。このアルバム「Children of The Fire(戦火の子供たち)」というタイトルが暗示するのは、ベトナムで失われた子供たちへの鎮魂であり、それからを生きる子供たちへのホープであったに違いなく、各楽曲のタイトルはその祈りの言葉を具体化したものとして受け取れます。

  1. Forest Sunrise
  2. Rhythm Ritual
  3. Song of Life
  4. Prelude
  5. Prayer
  6. Aftermath
  7. Finale

西欧からの有色人種への攻撃に対して無関心でいないというのはスピリチュアル・ジャズの一つのテーマ系で、ハンニバルに絶大な影響を及ぼしたジョン・コルトレーンも例えば「Alabama」「Dakar」で黒人アイデンティティへの気付きを自他共に促すなど、逆に言えばコルトレーンの後に続く彼の影響下にあるミュージシャンは人種問題と向きざるを得なかったわけで、そのアイデンティファイングが個々の裁量によってピースフルだったりヒーリングだったりと繋がっていくのかな、と。

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パーム・ユニット Palm Unit - Hommage à Jef Gilson (2018)

Palm Unit - Hommage à Jef Gilson (2018)

パーム・ユニット - トリビュート・トゥ・ジェフ・ギルソン

Genre:ジャズ
Style:コンテンポラリー・ジャズ
Recording:2018
Release:2018
Label:Super-Sonic Jazz
Philippe Garcia (ds), Frédéric Escoffier (og), Lionel Martin (ts, bs), Del Rabenja (valiha)

オランダの新興レーベル Super-Sonic Jazz の第一弾リリース、フランスのジャズ・ミュージシャンによる故ジェフ・ギルソン Jef Gilson のトリビュート・アルバム。Super-Sonic Jazz というのは勿論サン・ラ Sun Ra からの引用で、これだけで相当コズミックですが、ジェフ・ギルソンは現代にアップデートすると正にコズミックになるということを証明してくれる名作となっています。マスト・バイです。

エリック・トラファズ・カルテット Erik Truffaz のドラマー=フィリップ・ガルシア、ユーカンダンツ Ukandanz のテナー=リオネル・マルタン、それにル・サクル・デュ・タンパン Le Sacre du Tympan のフレデリック・エスコフィエ=オルガンが中心となって、マラガシー Malagasy のメンバーだったデル・ラベンジャ Del Rabenja まで召喚して結成されたこのパーム・ユニット。パーム Palm はジェフ・ギルソンが自作をリリースしていた自主レーベルで、バンド名からしてオマージュになっています。

全編素晴らしいですが白眉を挙げるとすれば、冒頭「Ouverture Jazz Pour San Remo」と、ファラオ・サンダース Pharoah Sanders のカバー「The Creator Has A Masterplan」。前者はジェフ・ギルソンがサン・レモ・フェスティヴァルのために書いた組曲で、これが首尾よく換骨奪胎されて、60年代フランスのダウナーな空気が見事に拡大解釈されています。後者はジェフ・ギルソンがマラガシーでカバーしたスピリチュアル・ナンバー。リオネル・マーティンの咆哮のようなテナーと、フレデリック・エスコフィエのオルガンに、デル・ラベンジャのヴァリハ(マダガスカルの伝統弦楽器)がテキスタイルのように織り重なって、ミクロ・コスモスを形成する様は圧巻。

以前紹介したジェフ・ギルソンのアルバムは「At Newport Paris」「New Call From France」。

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