Danny Davis, Marshall Allen, Sun Ra, Danny Thompson, Ronnie Boykins, Eloe Omoe, Pat Patrick, Atakatun, Chiea, Odun, Tommy Hunter, John Gilmore, Charles Stephens, Akh Tal Ebah, Lamont McClamb, Alzo Wright, June Tyson, Ruth Wright
Sun Ra, June Tyson, Marshall Allen, Danny Davis, John Gilmore, Akh Tal Ebah, Kwame Hadi, Eloe Omoe, Danny Ray Thompson, James Jacson, Ronnie Boykins, Tommy Hunter, Harry Richards, Robert Underwood, Lex Humphries, Atakatune, Alzo Wright, Odun
Sun Raのライブ盤「I Roam The Cosmos」は、1972年にニューヨークのジャズ・クラブSlug's Saloonで演奏された録音で、2010年代中盤に突如として正規リリースされました。このアルバムは、長年にわたり未発表のままだったため、リリース当時に大きな話題となりました。特に、名高いDJで音楽プロデューサーのジャイルズ・ピーターソンもこのアルバムをフェイヴァリットの一つとして挙げたことで、さらに注目を集めました。正規リリースに際しては、音質の向上やリマスタリングが施され、現代のリスナーにも聴きやすい音質となっています。これにより、当時のライブの臨場感がより鮮明に再現されています。
「I Roam The Cosmos」は1972年に録音されて以来、長い間正式なリリースがなされていませんでした。しかし、2010年代中盤に正規リリースされると、Sun Raの再評価の波もあり、彼の音楽遺産の重要な一部として広く認識されるようになりました。
「I Roam The Cosmos」は、Sun Raの他の作品と比べて、たゆたうようなゆったりとした演奏が特徴です。このライブでは、彼の独自の「コスモス節」が存分に発揮されていますが、アヴァンギャルドな要素は控えめで、比較的多くのジャズファン層にアピールできる内容となっています。
Sun Raの特徴である宇宙的なテーマは、このライブでも健在です。彼の音楽哲学やビジョンが音楽を通じて聴き手に伝わります。宇宙的なサウンドスケープと哲学が融合し、独特の音楽体験を提供します。
例えば「Space Is The Place」はSun Raの代表作の一つであり、壮大なアヴァンギャルド・ジャズの要素が強いのに対し、「I Roam The Cosmos」はそのテーマに寄り添いながら、よりリラックスした音楽性を持っています。言わば「Space Is The Place」をチルアウトしたバージョンと表現できます。
このトラック(アルバム)は、極端に遅いテンポの「A Love Supreme」と捉えることも可能です。John Coltraneの「A Love Supreme」が持つスピリチュアルな要素が、Sun Raの宇宙的なビジョンと共鳴しているともいえるでしょう。演奏の中でコールアンドレスポンスが繰り返され、次第に宇宙との対話が増幅されていく様子は、深い霊的な体験を呼び起こします。
名高いDJで音楽プロデューサーのジャイルズ・ピーターソンも、「I Roam The Cosmos」をお気に入りの一つとして挙げています。ピーターソンはジャズ、ソウル、ファンクなど幅広いジャンルの音楽を紹介することで知られ、その推薦は多くの音楽ファンにとって重要な指標となります。彼がこのアルバムをフェイヴァリットに挙げたことにより、Sun Raの音楽が再評価され、特に新しい世代のリスナーに対してその魅力が広く伝わりました。
長らく埋もれていた音源が正規リリースされたことで、Sun Raの音楽遺産がさらに豊かになりました。新たな音楽ファン層にアプローチするきっかけとなり、彼の音楽が再評価されました。
「I Roam The Cosmos」は、51分に及ぶ一曲のみの構成となっています。この長尺のトラックの中で、ボーカルのコールアンドレスポンスが繰り返され、次第に宇宙との対話が増幅されていくようなイメージが喚起されます。Sun Raの演奏とアーケストラのインタープレイは、聴き手を宇宙的な旅へと誘い、深遠な音楽体験を提供します。このような構成により、アルバムは一貫したテーマとムードを持ち、独特の魅力を放っています。
また、このアルバムはSun Ra的なゴスペルとして捉えることもできます。彼の音楽には、ブラックミュージックとしてのスピリチュアリティが色濃く反映されており、その点でJohn Coltraneの「A Love Supreme」とも通じる部分があります。Sun Raの演奏が持つ精神性と宇宙的な視点が融合し、深い霊的な体験を提供します。
「I Roam The Cosmos」は、Sun Raの音楽の中でも特にリラックスした雰囲気を楽しめるライブ盤として、多くのジャズファンに親しまれる作品です。彼の入門盤としての性格も帯びていると言えるでしょう。おすすめです。
Sun Raの膨大なディスコグラフィーには、このタイトルへの言及は2つしかない。1つは1973年のカーネギーホールでの公演を収録したVoice of Americaのモノラルテープ、もう1つは1974年のハンターカレッジでの公演を収録したオーディエンステープである。この録音は明らかにサウンドボード録音ではなく、極端なステレオである。この宇宙ドラマは、June Tysonが「Astro Black」の歌詞を哀歌のような「Discipline 27-II」のグルーヴに乗せて朗読することから始まる。その後、Sun RaとJune Tysonのコールアンドレスポンスの朗読へと移り、Arkestraが1時間近くもだらだらとした「D27-II」のリズムを維持し、ホルンのコーラスがアクセントを添える。一人称で人格を切り替えるかのように、ラは宇宙哲学を唱え、啓蒙を呼び起こし、神話を語り、悲惨な予言を伝え、ジューン・タイソンがそれぞれの祈りをエコーし、ドラマチックに表現する。テープボックスのマーキングによると、このパフォーマンスは1972年7月、ローワーイーストサイドのジャズのメッカ、イースト3番街にあるスラッグス・サルーンで行われたもので、1960年代後半から70年代前半にかけて、ラとアーケストラは頻繁にオールナイトのセットを演奏していた。メンバーは、誰が現れるか、誰が楽器を演奏できるか(または上手にフェイク演奏できるか)、そしてバンドリーダーの予言によって変動した。これらの伝説的な夜は、荒々しく予測不可能で、しばしば悲惨で、芸術的な論争もなかったわけではない。これらの夜によって、サン・ラはニューヨークのジャズの常連客の注目を集め、大胆なショーマンシップに対する彼の評判が高まった。
Noah Howard, Norris Jones, Juma, Mohammed Ali, Leslie Waldron, Arthur Doyle, Earl Cross
ノア・ハワードのアルバム「The Black Ark」は、1969年にニューヨークで録音され、1972年にリリースされた重要なフリー・ジャズ作品です。このアルバムには、アーサー・ドイル(テナーサックス)、アール・クロス(トランペット)、レスリー・ウォルドロン(ピアノ)、ノリス・ジョーンズ(ベース)、モハメド・アリ(ドラム)、ジュマ(コンガ)が参加しています。全曲ハワードの自作で、アグレッシブでスピリチュアルな演奏が特徴です。
このアルバムは、アラン・ベイツによって設立されたBlack Lion傘下のレーベルFreedomからリリースされました。1960年代後半から70年代にかけての多様化するジャズシーンに新たな生命力を吹き込んだこのレーベルは、ブラック・ミュージックやロフト・ジャズ、現代ジャズシーンに大きな影響を与えました。「The Black Ark」は、その活力と革新性を象徴する作品となっています。
「The Black Ark」の演奏は、アグレッシブかつパワフルなインタープレイと一貫したアフロ・グルーヴを特徴としています。ドラムやコンガのリズミカルでパーカッシヴなサウンドがスピリチュアリティを感じさせ、ドイルのテナーサックスはフリーキーなブロウが印象的です。クロスのブルージーでアブストラクトなトランペット、ウォルドロンのグルーヴィーなピアノも魅力的で、全体的に60年代ジャズのエッセンスを取り入れながらも独自のスタイルを確立しています。
「The Black Ark」は、ブラック・スピリチュアル派フリー・ジャズを示し、荒々しくも豊かな情感を湛えた演奏が堪能できます。混沌としたエネルギーと濃厚な情感が交錯し、聴く者に深い印象を残すこの作品は、フリー・ジャズのエッセンスを心ゆくまで味わうことができるでしょう。録音から数年後の1972年にリリースされたこのアルバムは、フリー・ジャズの中でも特に評価が高く、ハワードの作品の中でも重要な位置を占めています。
このアルバムを聴くことで、当時のジャズシーンの活力と革新性を感じることができます。「The Black Ark」は、ノア・ハワードの革新的な音楽アプローチとその時代のジャズシーンへの貢献を象徴する作品であり、今でもその重要性と影響力は色褪せることがありません。このアルバムは、ジャズという黒人音楽の伝統と革新の模索の上に成り立っていることを実感させてくれます。
高柳昌行のアルバム「Dedicated To Mr. Tonoyama」は、1989年のライブ録音であり、俳優の殿山泰司に捧げられた作品です。高柳昌行は日本のフリージャズシーンの重要な人物であり、その独特のギター演奏と前衛的なアプローチで知られています。このアルバムは、彼の未発表音源の一つであり、その歴史的な価値と音楽的な重要性から注目されています。
「Dedicated To Mr. Tonoyama」は、フリージャズの即興性と実験精神を存分に発揮した作品です。アルバム全体を貫くのは、即興とエレクトロニクスの実験的なノイズの塊です。高柳のギターは、従来の音楽の枠を超えたサウンドを生み出し、リスナーに深い印象を与えます。このノイズは、単なる音響的な混乱ではなく、計算された音の奔流であり、即興演奏の極致を体現しています。
このように、「Dedicated To Mr. Tonoyama」は、高柳昌行の音楽キャリアの中で特異な位置を占める作品であり、彼の音楽的探求と個人的な関係性が交差する、深い意義を持つアルバムです。ノイズの塊と静寂の対比によって形成される音楽の中に、高柳の深い感情と殿山泰司への敬愛が感じられるでしょう。また、電子音やサンプリングを用いた試みが、エクスペリメンタルミュージックとしての新たな可能性を提示している点でも注目すべき作品です。このアルバムは、高柳昌行の創造性と革新性を象徴し、彼の音楽遺産の一部として、その独自性と価値を高めています。