基本的には DIY のアルバムで、アパートの部屋にマイク1本立てて録って。それをインターネットにアップする形で自主リリースしたら、うまくいって、結果的には世界中をツアーして回れるまでになった。だからあのアルバムは自分にとってものすごく大きなもの。曲に誇りを持っているし、自分ひとりであれを作れたということにも誇りを持っている。「A Song For Every Moon」によって僕の人生はすっかり変わったんだ。
指揮者、編曲者、プロデューサー、作曲家、鍵盤奏者としてブラジルのディスコ~ポピュラー・ミュージックを支えた故リンコン・オリヴェッチ Lincoln Olivetti が全面的にバックアップ。チンのアイディアを受け止めつつ、自由に音楽的アイディアを加味して、よりチン・マイアのソウル・ミュージックを強烈なサウンドに作り上げた初めてのアレンジャーがリンコンでした。
その顔ぶれはチン・マイア Tim Maiaを筆頭に、マルコス・ヴァーリ Marcos Valle、ジョルジ・ベン Jorge Ben、ジルベルト・ジル Gileberto Gil、ガル・コスタ Gal Costa、リタ・リー Rita Lee、ロベルト・カルロス Roberto Carlos、カエターノ・ヴェローゾ Caetano Veloso、マリア・ベターニア Maria Bethânia、ルル・サントス Lulu Santos …挙げればその凄みがますます伝わってくるほど。ブラジル音楽の深層・真相に食い込んでいたのは確かです。
Stephen Doc Kupka (bs), David Hood (b), Scott Fronsoe (b, vo), Roger Hawkins (ds), Jimmy Johnson (g), Barry Beckett (key), James Walsh (vo, key), Ernie LaViolette (per, ds), Emilio Castillo (ts), Todd Hansen (tb, vo), Greg Adams (tp, fh), Richard Jorgensen (tp, fh, vo), Deone Johnson (tp, fh, vo), Jim Behringer (vo, g)
69年にはバンド名を Gipsy に改め(プログレ・ファンにはお馴染みのバンド)、70年から4枚のアルバムをリリースしますが、73年にはメンバーの一人が Sly & The Family Stone に移籍し、バンドは空中分解。そこでこの記事の主人公ウォルシュは、同郷ミネアポリスのバンド Free & Easy と合流、James Walsh Gipsy Band を結成します。そして78年、満を持してRCAからリリースしたデビュー・アルバムは堂々のセルフ・タイトルド・アルバム「James Walsh Gipsy Band」。このデビュー作は全米71位まで上るマイナー・ヒットになりました。
さて、前置きが長々となりましたが、今回紹介する「I've Got The Feelin'」はその James Walsh Gipsy Band の2作目で、サザン・ソウルの名門スタジオ Muscle Shoals マッスル・ショールズで79年に録音されるもお蔵入りとなった幻のアルバム。お蔵入りとされた後は、00年くらいからオフィシャル・サイトで少数CD-Rで流通されたのみでした…16年にきちんとリイシューされるまで。今では誰もがこの傑作に触れることができるようになっています。
プロデュースはジェイムズ本人とマッスル・ショールズのバリー・ベケット Barry Beckett、ジミー・ジョンソン Jimmy Johnson。脇をマッスル・ショールズのセッション・ミュージシャンが固め、タワー・オブ・パワー Tower of Power のホーン・セクションや、ビージーズ Bee Gees のストリングス隊が参加しています。
スティーリー・ダン Steely Dan 「Caves of Altimira アルタミラの洞窟の警告」、ビル・ラバウンティ Bill LaBounty「Lie To Me」のカバーを収録。
「What's Going On」のポリティカルな面、そして音楽性も受け継いだ冒頭「You're The Man」、トラック 2「The World Is Rated X」だけで名盤入り確実なのに、ダメ出しで「Where Are We Going?」までグッとハートを掴むわけです。
その「Where Are We Going?」、それとい「Woman of The World」はフレディー・ペレン Freddie Perren とフォンス・ミゼル Alphonso "Fonce" Mizell がプロデュースをしていて、ここがジャズ畑と絡んできます。フォンス・ミゼルは言わずとしれたラリー・ミゼル Larry Mizell とミゼル兄弟で Sky High Production で数々のジャズ・ファンク~レア・グルーヴの名作をプロデュースしたレアグル・ファンにはお馴染みの二人。ボビー・ハンフリー Bobbi Humphrey や、ジョニー・ハモンド Johnny Hammond、ゲイリー・バーツ Gary Bartz、そして御大ドナルド・バード Donald Byrd の電化ファンク期の屋台骨を支えた人物。