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ブラジル産スピリチュアル・モード!Vitor Assis Brasil - Desenhos (1966)

Vitor Assis Brasil - Desenhos (1966)

ヴィトル・アシス・ブラジル - デゼーニョス

Genre:ジャズ
Style:ブラジリアン・ジャズ、モード
Recording:1966
Release:1966
Label:Forma
Vitor Assis Brasil (as), Tenorio Junior (p), Edison Lobo (b), Chico Batera (ds)

FORMA(ホベルト・クアルチン主宰のレーベル)からは、ボサ・トレス Bossa Tres や、そのピアニストのルイス・カルロス・ヴィーニャス Luis Carlos Vinhas が良質なサンバ・ジャズのアルバムを残しています。このヴィクトル・アシス・ブラジルの傑作ファーストもそのFORMAから1966年にリリースされたアルバムです。

ヴィトル・アシス・ブラジルは1945年リオ生まれで35歳で夭折。つまりこのジャズ史に残るアルバムを吹き込んだとき、若干21歳!今回は、生前にリリースされた6枚のアルバム全てが傑作という神童アルト奏者のデビュー作についてです。

90年代のクラブ・ジャズ・シーンでブラジリアン・ミュージックが再評価される中、ブラジリアン・ジャズの範疇のヴィトルもその文脈の中で再発見されました。特に冒頭のジョアン・ドナート作「Naquela Base」がニコラ・コンテ Nicolo Conte にサンプリングされるなど、クラブ・ジャズ・クラシックとして人気があります。ただ気を付けたいのは、ヴィトルの音楽性はブラジルという音楽の範疇に縛られるものではなくて、例えばジャズ・ボサノヴァとかサンバ・ジャズという言葉では括りきれないということです。クラブ・ジャズを期待しても肩透かしを食らうかも。このアルバム「デゼーニョス」はコルトレーンでいえば「バラッズ」のようなアルバムかも知れません。

ベースにエヂソン・ロボ、ドラムスにシコ・バテラ、ピアノにテノーリオ・ジュニオールを配した鉄壁の四重奏団。エヂソン・ロボは、ドン・サルヴァドール Dom Salvador のトリオ後、ル・トリオ・カマラ Le Trio Camara で吹き込み。ピアノのテノーリオ・ジュニオール Tenorio Jr. は今やこのメンバーの中で一番知名度があると言っても過言ではない伝説のピアニスト。27歳という若さでこの世を去り、人気アルバム「Embalo」をRGEに残しました。

このアルバムの聴きどころは散りばめられたバラード群から立ち昇るぐっと抑制されたスピリチュアリティとモーダリティで、例えばサンバのスタンダード「Primavera」で聴ける切々と歌い上げる哀愁のアルトにその極みを聴くことができます。丁寧に綴られる一音一音が内省的に真摯に彼の愛情を Desenhos = Drawings していく様がありありと浮かび上がってきます。少し彩りを添えたいと思われれば「Amor de Nada」で少々陽気にワルツなど。

この後、ヴィトスはセカンド「Trajeto」でよりモーダリティに接近したあとバークリーに留学するも、帰国後にジョビン楽曲集を吹き込むなど、アイデンティティを見失うことはありませんでした。

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