ジャズの名盤・名作をご紹介

ジャズの名盤探検隊

英国フォーク名盤 ヴァシュティ・バニヤン Vashti Bunyan - Just Another Diamond Day (1970)

ヴァシュティ・バニヤンは1945年生まれ、ロンドン育ち。18歳でNYに渡り、ボブ・ディラン Bob Dylan の音楽に出会い、ミュージシャンになることを決意したそう。

Vashti Bunyan

65年、彼女はローリング・ストーンズ The Rolling Stones のマネージャー、アンドリュー・ルーグ・オールダムと出会い、彼の下でミック・ジャガー Mick Jagger とキース・リチャーズ Keith Richards のペンによる「Some Things Just Stick In Your Mind」を Decca からリリースしデビュー。しかし商業的には成功せず、それ以来ショービズを離れ、馬車で放浪の旅に。

68年のクリスマス、彼女は友人を介してジョー・ボイド Joe Boyd と出会いました。彼は60年代UKサイケの聖地 UFO Club を主催していて、フェアーポート・コンヴェンション Fairport Convention やニック・ドレイク Nick Drake、ピンク・フロイド Pink Floydのプロデュースを手掛けていた人物。彼のプロデュースでヴァシュティはデビュー・アルバムを吹き込みます。ザ・インクレディブル・ストリング・バンド The Incredible String Band と フェアポート・コンヴェンション Fairport Convention のメンバーも参加して誕生したのが「Just Another Diamond Day」。わずか数百枚のプレスでした。

1970年にひっそりとこのアルバムをリリースした後、またも音楽業界から姿を消してしまい、その後は英国の深い森に住むフェアリーのような存在だった彼女。ヴァシュティが再びシーンを賑わしたのは90年代末、唯一のアルバム「Just Another Diamond Day」が、フリー・フォーク系ミュージシャンたちの間で再評価され、それがきっかけとなって00年にCD化。長い間、音楽シーンから遠ざかっていた彼女は活動を再開し、05年には35年ぶりとなるアルバム「Lookaftering」を発表。世界中のファンを驚かせました。

Vashti Bunyan - Just Another Diamond Day

Vashti Bunyan - Just Another Diamond Day

Genre:フォーク
Style:英国フォーク、フォーク・ロック
Recording:1970
Release:1970
Label:Philips

「Just Another Diamond Day」…ヴァシュティ・バニヤンといったら、イコールこのアルバムと言っていいでしょう。2分前後の小曲が13曲並んでいるだけなのに、その13曲全てに特別な魔法がかかっています。英国フォークの深い森には妖精たちがたくさん。リコーダーやマンドリン、バンジョー、フィドル、ハープの最小限のアレンジ。30分にも満たないヴァシュティ・バニヤンの歌声が、聴く人の周りを優しく包み込みます。

「Diamond Day」のリコーダーが聴こえた瞬間、世界は紅茶の国に大変身。特別な時間が流れ出します。まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようです。「Glow Worms」の優しい弾き語り。「Lily Pond」では妖精が現れて周りを飛び回ります。「Timothy Grub」は物語の読み聞かせ、まるで子守唄を歌ってくれているみたい。「Where I like To Stand」は言葉遊びのインプレッション。「Swallow Song」は朝靄か夕霧の中をストリングが優しく跳ねています。「Window Over The Bay」はアカペラで夏が去ったことを告げてくれます。「Rose Hip November」は季節の移り変わり。「Come Wind Come Rain」で風と雨の中を妖精たちが行進してくるのが見えるようです。「Hebridean Sun」は春がきたことを教える歌。「Rainbow River」はリコーダーの音色が虹になって小川を流れていきます。アルバムの終いが近づいてきました。「Trawlerman's Song」は魚が跳ねる。「Jog Along Bess」で妖精たちがさようならを言っています。

Vashti Bunyan - Lookaftering

Vashti Bunyan - Lookaftering

Genre:フォーク
Style:英国フォーク、フォーク・ロック
Recording:2005
Release:2005
Label:FatCat Records
Vashti Bunyan (vo, g), Max Richter (p, org, mellotron), Rebecca Wood (ob), Adem (harmonium, autoharp), Devendra Banhart (g), Adam Pierce (dulcimer), Robert Kirby (tp, fh), Marcelo de Oliviera (g)

どこかビネッテ・シュレーダーを連想させる兎のアートワークは、ヴァシュティ・バニヤンの娘ウィン・ルイス Whyn Lewis が描いたものです。

前述したように90年代以降のフリー・フォーク・ブームでの再評価を発端にして、「Just Another Diamond Day」が再発されました。それを皮切りにヴァシュティは音楽活動を再開します。アップル・マジック Apple Magic やアニマル・コレクティヴ Animal Collective への作品にゲスト参加し、そこから FatCat との契約に至ります。そして、これが驚くべきことですが、レーベル・メイトのマックス・リヒター Max Richter と繋がることになり、35年ぶりとなるこのアルバム「Lookaftering」のプロデュースをリヒターが引き受けることになったのです。そしてアレンジには、ニック・ドレイクとの仕事や、前作「Just ~」を手掛けたロバート・カービーを迎えて制作されました。

Vashti Bunyan - Heartleap

Vashti Bunyan - Heartleap

Genre:フォーク
Style:英国フォーク、フォーク・ロック
Recording:2014
Release:2014
Label:FatCat Records
Vashti Bunyan (vo, g, key), Jo Mango (kalimba), Gilon Cameron (strings), Flona Brice (strings), Ian Burdge (strings), Gareth Dickson (g), Andy Cabic (g, vo), Devendra Banhart (vo), Ian Wilson (recorder, sax)

「Lookaftering」から9年ぶりに発表された3作品目、彼女自身がおそらく最後のアルバムになるだろうという「Heartleap」。ジャケットは前作に続き、娘のウィン・ルイス。

前作でのマックス・リヒターとの共同作業で、コンピュータによるデスク・トップ・ミュージックの可能性を探求した彼女が辿り着いたのは、セルフ・プロデュースによるアルバム作り、そして時間をかけてアルバム作りに没頭するために彼女が選んだのは彼女自身の自宅だったのです。40年以上付き合いのあったアレンジャー、ロバート・カービーがこの世を去ったこともセルフ・プロデュースに踏み切った大きな要因となったようです。

Vashti Bunyan - Some Things Just Stick In Your Mind: Singles & Demos 1964-1967

Vashti Bunyan - Some Things Just Stick In Your Mind: Singles & Demos 1964-1967

Genre:フォーク
Style:英国フォーク、フォーク・ロック
Recording:1964-1967
Release:2007
Label:FatCat Records

「Just Another Diamond Day」より前、デモ曲や、キース・リチャードとミック・ジャガーのペンによるデビュー・シングル「Some Things Just Stick In Your Mind」も収録しています(この曲だけスウィンギング・ロンドンな感じで浮いています…マーゴ・ガーヤン Margo Guryan みたい)。素朴な弾き語りテイクを多数収めたファンは必聴の未発表曲集。「Train Song」も収録しています。

Vashti Bunyan - Amiralen, Malmo, Sweden July 3 2006

Vashti Bunyan - Amiralen, Malmo, Sweden July 3 2006

Genre:フォーク
Style:英国フォーク、フォーク・ロック
Recording:2006
Release:2006
Label:Unofficial

アンオフィシャルですが、06年のスウェーデンでのフェスのライブ・ブートレグです。「Lookaftering」リリースの翌年ですね。37分ほどの弾き語りで、「Just Another Diamond Day」からも歌ってくれています。

  1. Intro
  2. Hidden
  3. Diamond Day
  4. Lately
  5. Winter Is Blue
  6. Here Before
  7. Where I Like To Stand
  8. Feet of Clay
  9. Window Over The Bay
  10. Against The Sky
  11. I'd Like To Walk Around In Your Mind
  12. Warward
@ 管理人
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