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ホレス・タプスコット特集 Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra / Nimbus Records

最終更新日:2020-09-27

Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra

ニューヨークのStrata East、セントルイスの Black Artist Group、デトロイトの Tribe、シカゴの AACM (The Association For The Advancement of Creative Musicians)、オークランドの Black Jazz と並び、ローカル・コミュニティに根差したブラック・ジャズ最重要レーベルのひとつとして今も語り継がれる、ロスアンゼルス発のニンバス Nimbus / Nimbus West レコード。このレーベルは、The Pan-Afrikan Peoples Arkestra (PAPA)、UGMAA (Union of God's Musicians & Artists Ascension) の創始者として知られるホレス・タプスコットの音楽家としての資質の高さに触れたトム・アルバック Tom Albach によって1979 年に設立されました。

ホレス・タプスコットは1934年生まれ、テキサス生まれのロス育ちというこの人物、1961年頃に自身のオーケストラである PAPA を結成。同時期には UGMAA を設立。ロスの様々な黒人芸術家を支えるコミュニティとして多くのアーティストを育成・輩出しました。しかし、不遇の時代は続き、60年代終わりには初リーダー作を発表するも、その後長らくは安定したミュージシャン活動ができず、それでも77年に休止していた PAPA を再結成し、音楽活動を続行。それがアルバニックとの出会いに繋がっていきます。そうして、タプスコットと PAPA の音楽を録音するために生まれたニンバス・レコードは、タプスコット及び UGMAA のメンバーの名作を発表していきます。現代ジャズの例えばカマシ・ワシントン Kamasi Washington らにも影響を与え続ける、その源流をアルバムで遡ってみましょう。

Horace Tapscott - The Giant Is Awakened

Horace Tapscott Quintet - The Giant Is Awakened

Genre:ジャズ
Style:
Recording:1969-4-1
Release:1969
Label:Flying Dutchman
Arthur Blythe (as), David Bryant (b), Walter Savage Jr. (b), Everett Brown Jr. (ds), Horace Tapscott (p)

69年にフライング・ダッチマンからリリースされたタプスコットの初リーダー作。アルトにアーサー・バイスを迎えたクィンテットでの吹き込みで、この時点でタプスコットの音楽性はほぼ確立されていました。この後、タプスコットはニンバス・レコードの設立まで、ある意味不遇の時代を迎えますが、その間も変わらぬ音楽的信念を持ち続けたということが、この作品から窺い知ることができるのです。この作品が「硬派」であるように、タプスコット自身も硬派だったと言えますでしょうし、それ故に The Giant Is Awakened 的なアルバムになるべくしてなったのです。

Horace Tapscott - Flight 17

Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra - Flight 17

Genre:ジャズ
Style:モード、ブラック・ジャズ、インディペンデント
Release:1978
Label:UGMAA / Nimbus
Herbert Callies (a-cl), Michael Session (as), David Bryant (b), Kamonta Lawrence Polk (b), Louis Spears (cello), Horace Tapscott (p), Everett Brown Jr. (ds), Kafi Larry Roberts (fl), Jesse Sharps (ss, ts, fl), William Madison (per, ds), Linda Hill (p), James Andrews (ts, b-cl), Archie Johnson (tb), Lester Robertson (tb), Red Callendar (tuba), Adele Sebastian (vo, fl)

スウィング・ジャーナル2009年7月号「新世紀 幻の名盤はこれだ!」にも掲載された PAPA 名義での記念すべき初アルバム。

冒頭のタイトル・トラック「Flight 17」のピアノ・ソロが告げるタプスコット流黒人音楽の幕開けは、PAPA の圧倒的な熱量によって一気に爆発します。どうだ、見たか、この野郎的な凄さに圧倒されることもありましょう。この5拍子のミニマルでパーカッシヴで呪術的な音塊の中で、タプスコットのピアノは現代音楽さながら。また、音楽的構成も見事でコンダクターとしてのタプスコットの才覚も遺憾なく発揮されています。PAPA の音楽的懐の広さを存分に堪能できるインディペンデント・ブラック・ジャズが満載です。ちなみにトランペット・レスなので、チューバを含めホーンの厚みのあるサウンドがまたパン・アフリカンらしいと言えましょうか。

Horace Tapscott - The Call

Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra - The Call

Genre:ジャズ
Style:モーダル、ブラック・ジャズ、インディペンデント
Recording:1978-4-8
Release:1978
Label:UGMAA / Nimbus
Herbert Callies (a-cl), Michael Session (as), David Bryant (b), Kamonta Lawrence Polk (b), Louis Spears (cello, b), Horace Tapscott (p), Everett Brown Jr. (ds), Kafi Larry Roberts (fl, ss), Jesse Sharps (ss, ts, fl), William Madison (ds, per), Linda Hill (p), James Andrews (ts, b-cl), Archie Johnson (tb), Lester Robertson (tb), Red Callendar (tuba, b), Adele Sebastian (vo, fl)

ニンバスからの2ndアルバム。冒頭のタイトル・トラック「The Call」から飛ばします。エヴァレット・ブラウン Jr. のキレキレのドラムの上をタプスコットのピアノが疾走するモーダル・ジャズ。一撃入魂のカッコよさに痺れます。トラック 2「Quagmire Manor At Five A.M.」はアデル・セバスチャンの歌声で幕を開ける美しくも怒濤のスピリチュアル・ナンバー。弦楽器がアンサンブルを先導するバップ・テイストの「Nakatini Suite」。クラシックとの融合を思わせるテーマを持ったドラマティックなモーダル・ワルツ「Peyote Song No. III」。1stよりも総じてモーダルで、洗練されたコンポジションが満載。タプスコット入門にオススメのアルバムです。

Horace Tapscott - Live At I.U.C.C.

Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra - Live At I.U.C.C.

Genre:ジャズ
Style:インディペンデント・ブラック・ジャズ
Recording:1979
Release:1979
Label:Nimbus West Records
John Williams (bs), Alan Hines (b), Roberto Miranda (b), Billy Hinton (ds), Adele Sebastian (fl), Aubrey Hart (fl), Daa'oud Woods (per), Horace Tapscott (p), Billy Harris (ss), Sabia Matteen (ts), Lester Robertson (tb), Michael Session (as), Jesse Sharps (ss), James Andrews (ts), David Bryant (b), Louis Spears (cello), Bob Watt (fh), Mike Daniels (per), Linda Hill (p), Desta Walker (ts), Herbert Callies (a-cl), Kafi Roberts (fl), Billy Harris (ts), James Andrews (ts), Red Callender (tuba)

1979年、ロスの教会での PAPA のライブを捉えた貴重なレガシーにして、圧倒的熱量の塊である一大長編絵巻。タプスコットが志向した前衛性やアフリカ性がエディットなしでそのまま記録されています。タプスコットのカタログの中でも超弩級の強度を誇る作品なので、ぜひ聴いておきたいところです。

Horace Tapscott - In New York

Horace Tapscott - In New York

Genre:ジャズ
Style:ポスト・バップ、ピアノ・トリオ
Recording:1979
Release:1979
Label:Interplay Records
Art Davis (b), Roy Haynes (ds), Horace Tapscott (p)

ベースにアート・デイヴィス、ドラムにロイ・ヘインズを迎えたピアノ・トリオ編成でのスタジオ録音。ディストリビューションはニンバスではなく、インタープレイ・レコーズ。ジャケットがいささか、というかかなりダサいのが難点。比較的オーソドックスなバップ以降のプレイをしているので、さらっと聴けてしまう感じです。ピアノ・トリオものでしたら、後述のアルバム「Live At Lobero」がオススメです。

Horace Tapscott - Dial B For Barbra

Horace Tapscott - Dial B For Barbra

Genre:ジャズ
Style:モーダル、ポスト・バップ
Recording:1980
Release:1981
Label:Nimbus
Gary Bias (as, ss), Roberto Miguel Miranda (b), Everett Brown Jr. (ds, per), Horace Tapscott (p), Sabir Matteen (ts), Reggie Bullen (tp)

タプスコットには珍しくトランペットとアルト、テナーを配した3管のセクステット形態。「Lately's Solo」はマイルスの「Milestone」のテーマを借用して、そこにオリジナルのテーマを被せたタプスコット流のモードが全開する佳曲。新主流派を思わせるタイトル・トラック「Dial 'B' For Barbra」でもタプスコットのプレイは素晴らしく冴え渡っています。リフが「So What」を想起させるリンダ・ヒル名義の「Dem' Folks」は20分に及ぼうかという大曲。ミニマルで変拍子も盛り込んだリフレインの上をリード・ソロが入れ替わりながらも揺蕩う様は、70年代初頭の英国ジャズを引き合いに出したくなるカッコよさ。密度の高い全3トラック。マスト・リスン!

Horace Tapscott - Live At Lobero, Vol. 2

Horace Tapscott - Live At Lobero, Vol. 2

Genre:ジャズ
Style:モーダル、ピアノ・トリオ
Recording:1981-11-12
Release:1982
Label:Nimbus West
Roberto Miranda (b), Sonship (per), Horace Tapscott (p)

カリフォルニアはサンタ・バーバラのロベロ・シアターでのライブを収めたアルバム。タプスコットをピアノ・トリオで聴くことができます。タプスコットのピアノは時に激情的になりますが、美しい旋律を持ち味としたモード演奏を基調としています。ベースのロベルト・ミランダとドラムのサンシップのプレイも圧巻。どのアルバムにも言えることですが、タプスコットの音楽性はフリー・ジャズではないことに色んな意味で注意を払ってほしいところです。

Horace Tapscott - Little Afrika

Horace Tapscott - Little Afrika

Genre:ジャズ
Style:ポスト・バップ、ピアノ・ソロ
Recording:1983-8-16
Release:2010
Label:Absord Music Japan
Horace Tapscott (p)

タプスコットのソロ音源。タプスコットの演奏には、その初期から叙情性を伺うことができましたが、ソロ演奏になることでその美しさが炙り出されることになりました。特にタイトル・トラックの「Little Afrika」は優美なワルツとなっていて、それと同居するアヴァン・ギャルドな面がダイナミズムを生んでいます。ここにタプスコットの本質的な部分を見ることができるのかもしれません。

Horace Tapscott - The Dark Tree

Horace Tapscott - The Dark Tree

Genre:ジャズ
Style:ポスト・バップ、モーダル
Recording:1989-12
Release:1999
Label:hatOLOGY
John Carter (cl), Cecil McBee (b), Andrew Cyrille (ds), Horace Tapscott (p)

1989年のハリウッドはカタリナ・ジャズ・クラブでのライブ2枚組。タプスコットをリーダーに、クラリネットのジョン・カーター、ベースにセシル・マクビー、ドラムにアンドリュー・シリルと、面子に申し分なしのカルテット。全員のプレイが凄い。そしてもう90年代もすぐそこ、タプスコットは50代半ばという時期に、これだけのアルバムを残していることに驚きを禁じえません。

Horace Tapscott - Ancestral Echoes

Horace Tapscott w/ The Pan-Afrikan Peoples Arkestra - Ancestral Echoes: The Covina Sessions, 1976

Genre:ジャズ
Style:モーダル、ビッグ・バンド
Recording:1976
Release:2020
Label:Dark Tree
Gary Bias (as), Michael Session (as), Amos Delone (bs), David Bryant (b), Marcus McLaurine (b), Horace Tapscott (p), Moises Obligacion (congas), Ishmael Balaka (ds), Ricky Simmons (ds), Adele Sebastian (fl), Aubrey Hart (fl), Wendell C. Williams (fh), Linda Hill (p), Jesse Sharps (ss), Charles Chandler (ts), James Andrews (ts), Fuasi Abdul-Khaliq (ts, b-cl), Lester Robertson (tb), Steven Smith (tp), Red Callender (tuba), Kamau Daáood (vo)

今年リリースされた1976年 PAPA の発掘音源。ニンバスからのリリース前に PAPA に70分にも及ぶ吹き込みがあったとは、世紀のリリースといっていいですね。しかも内容が如何せん素晴らしい。音質も良好なので言うことないでしょう。間違いなく今後のタプスコットのディスコグラフィーや推薦盤に掲載されることになるはずです。傑作。

全4曲、それぞれのソロイストは、「Ancestral Echoes」でタプスコット→ジェシー・シャープス→カマウ・ダアウド。「Sketches of Drunken Mary」はオーブリー・ハート→タプスコット→マイケル・セッション。「Jo Annette」はチャールズ・チャンドラー→タプスコット→ウェルデン・C・ウィリアムズ。「Eternal Egypt Suite」でアデレ・セバスチャン→フアシ・アブドゥル・ハリク→タプスコット→スティーヴン・スミス。

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